配偶者控除をめぐる議論
おはようございます。会社設立サポーターの岸本です。
10月14日付のブログにて、税制改正の動向としまして「外形標準課税」について述べてましたが、今回は「配偶者控除」についての動向について触れてみます。
今春に「配偶者控除撤廃か?!」というニュースが流れ、つい先日「安部総理が15年度以降に配偶者控除見直し検討を指示」という記事が出ておりました。職業柄、また、一個人としても気にはなっておりましたが、先週の10月21日には早速、内閣総理大臣の税制に関する諮問機関である政府税制調査会において会議が開かれたようで、その時の会議資料が内閣府のホームページに掲載されています。
掲載されている会議資料を見てみますと、『「働き方の選択に対して中立的な税制」を中心とした所得税のあり方』、ということで検討の視点とこれまでに出された意見が掲載されています。これによると、配偶者控除を廃止すべきか否か、様々な意見が出ているようですが、まとめると次のようになっています。
≪廃止賛成意見≫
・半世紀前に構築された現行配偶者控除等の体系を現代の社会・経済構造に対応させるべき
・税制で配偶者の家事等への貢献を考慮する必要は乏しく、廃止してもよいのでは
・配偶者控除を廃止して、税制上の配慮の重点を子育て支援にシフトすべき
≪廃止反対意見≫
・配偶者控除の廃止は、片働き世帯、パート世帯への増税となる
・専業主婦(夫)やパートの方々の地域活動を通じての社会貢献は評価すべき
そもそも、配偶者控除の見直しは、女性の社会進出を推進している安部内閣が、その弊害となっているであろうとのことで浮上したものです。当初のニュースでは廃止ありきで話題になっていたようにも思われますが、賛否両論、方向性も定まっていないようです。単に配偶者控除を廃止するのではなく、家族のあり方や働き方などを総合的に考慮しつつ、中立的な税制を構築していくべきである、との視点から検討すべきというのが現時点での議論の途中経過のようです。
過去を思い起こせば、民主党政権下の2010年に15歳までの子供1人に対して月額13,000円が支給された子ども手当がスタートし、翌年には15歳以下の年少扶養控除が廃止、挙句の果てに2013年には子ども手当が廃止(児童手当に移行)という改正が数年前に目まぐるしく行われました。小さい子供が2人いる私は、子ども手当がスタートした初年度こそは得した気分になっていたものの、年少扶養控除廃止後は何やら煙に巻かれたようで増税感でいっぱいでした。小さい子供さんがおられる方は殆どが同じ様に感じられたことでしょう。この一連の改正により、殆どの子ども手当対象世帯での実質的収入(手当収入-所得税・住民税増税額)がマイナスであるとの結果が出ていることからも結果的に増税であったことは明らかなのです。
このような所得控除の改正に絡んだドタバタ劇が繰り広げられたのがつい数年前のこと、配偶者控除の見直しについては、「女性の社会進出の推進」という大義名分の下、慎重な議論を重ねて、課税の公平性という基本を忘れることなく誰もが納得のいくような見直しを進めていただきたいものです。
会議資料の詳細はこちらをご参照ください。《第5回 基礎問題小委員会(2014年10月21日)資料一覧》