シリーズ『資金繰り表の作リ方』 (3)経常収支の部
こんにちは ひかり会社設立サポーター、税理士の山下です。
シリーズ「資金繰り表の作リ方」、3回目である今回は、経常収支の部の作成方法およびその意味について記載致します。
上記の資金繰り表のうち、上半分が経常収支の部であり、「営業収入等」「営業支出等」から成り立っています。
記載内容としては、それぞれの項目の通りですが、「営業収入等」については、本業により入金された現金について、「営業支出等」については、本業によって支払われた現金について、それぞれ記載されることになります。
つまり記載のポイントとしては、
・商品を納品したか等ではなく、実際に現預金による代金の入金・支払のあった金額を計上する。
・本業による営業活動や投資活動についての金額を計上し、資金の貸し借りや増資などについては記載しない。(これらは財務収支の部の記載事項)
ということになります。
通常、試算表や決算書などの会計資料では、代金の収受に関わらず、商品を納品したか等の「発生の事実(発生主義と言います)」に基づいて金額が計上されます。しかし信用取引(掛け取引や手形取引)の多い日本の場合、たとえ会計資料では利益が出ていたとしても、実際に資金繰りが適正に推移しているかを判断することはできません。そこで「現金収受の事実(現金主義と言います)」に基づいて金額が計上され、資金繰りの推移を把握できるように作成されるのが資金繰り表なのです。
その中でも、経常収支の部については、「会社の本業によって現金が増えているのか減っているのか」を把握することができることから、ここがプラスで推移しているのかマイナスで推移しているのかは、会社の経営において非常に重要であると言えます。
例えば金融機関が会社に対して融資をするかどうかを検討する際には、必ずこの経常収支の部がどの程度プラスなのかをチェックすることになります。言い換えると、この経常収支の部がプラスであるからこそ、銀行から借りた資金を返済することができる訳であり、逆に金融機関から見ると、経常収支の部がマイナスの会社に融資をしても、貸したお金は帰ってこないと言えるわけです。
逆にもし経常収支の部がマイナスになっているのであれば、会社の本業によってお金が減っている状態にあるため、販売価格・仕入れ価格の検討、入金・支払い条件の検討、経費の削減など、経常収支をプラス化するための方策を考えたり、または社長からの借り入れなどで経常収支のマイナスを補填するための方策を考えたりすることが必要となります。