~引導を渡すのは監査役~
1月13日京都新聞経済面「経済天気図」にグループCEO光田の執筆が掲載されました。
ご一読ください。
昨年末、金融庁は東芝の会計監査を担当した監査法人に対して、粉飾決算を看過したことと法人運営が著しく不当であることを理由に、課徴金21億円、3ヶ月間の新規契約停止、業務改善命令の3点セットの行政処分を行った。また、関与した7人の公認会計士に対しては最長で6ヶ月の業務停止を命じた。
ここで時計の針を10年前に戻してみよう。2006(平成18)年5月、金融庁は当時の大型粉飾決算に関わった大手監査法人を2か月の業務停止処分にした。本業を止められた監査法人が存続できるはずもなく、程なくして解散の憂き目を見た。この時、監査業界は混乱を極めたにもかかわらず、その歴史に学ぶことなく事件は繰り返されたわけである。
ところで、今回の処分は課徴金はともかく、監査業務の全面停止ではなく新規契約の停止のみであることから、影響は軽微に留まるとの見方がある。しかし、果たしてそうであろうか。 昨年5月に施行された改正会社法では、監査法人の選解任に関する議案の決定権が監査役に委ねられた。したがって、監査役は現任の監査法人の業務の妥当性を評価する必要がある。新規ではなく再任の場合でも、それに相応しいかどうかを検証しなければならないが、金融庁の処分理由からは再任を妥当とする根拠は見い出しがたい。 こうした中、処分された監査法人を不再任としない監査役は善管注意義務違反に問われかねない。つまり、処分の影響は軽微ではなく、この監査法人は顧客会社の監査役から引導を渡されることになるのではないか。
(ひかり)