上場株式等の売却益や配当に関する確定申告について
お早うございます。ひかり会社設立サポーター、税理士の山下です。
起業家の皆様の中には、個人で株式の投資等をしておられる方も多いかと思います。
そろそろ証券会社等から特定口座の年間取引報告書も届きだしており、確定申告の時期の到来を実感しておられるのではないでしょうか。
今回は、特定口座に関する所得税・住民税について記載させて頂きます。
特定口座で運用されている上場株式等につきましては、売却益や配当によって利益が生じた際に一定の税金が源泉徴収されています。
税率は平成26年1月以降、源泉所得税15%・復興特別所得税0.315%・地方税5%の合計20.315%となっておりますので、他の給与・年金などの所得金額によっては、確定申告をすることによって源泉徴収された税金の還付を受けることができます。
特定口座に関する申告については、以下の3通りの方法が考えられます。
①確定申告を行い、給与・年金など他の所得と合算して税額計算を行う。(総合課税)
この方法は、確定申告を行って上場株式等の譲渡益・配当の所得と、他の給与・年金等の所得を合算して税額を計算し、その結果、特定口座から源泉徴収されていた税額に納めすぎの金額があれば、その分の還付を受けることができるものです。
税率は超過累進課税により、所得に応じて5%~40%まで段階的に増加します。
またこの方式では、配当金について10%または5%の配当控除という控除も受けることができます。
②確定申告を行うが、給与・年金など他の所得とは合算せず、他の株式・配当等と損益通算(利益と損失を相殺)する。(申告分離課税)
この方法は、確定申告を行うものの、給与・年金など他の所得とは合算せず、他の株式・配当等で申告分離課税方式を選択したものと利益・損失を相殺し、これら申告分離課税の部分のみで別途税金を計算するもので、税率は前述の国税・地方税トータルで20.315%となっています。
また特定口座で損失が生じていた場合には、確定申告をすることでその損失を翌年以降3年間繰り越すことができ、将来の売却益等と相殺することもできます。
なお、この方式では①に記載した配当控除を使うことはできません。
③確定申告を行わず、源泉徴収されたままで済ます方法
①の方法では、課税所得695万円超の方は、特定口座から源泉徴収される税率より、他の所得と合算して計算する税率の方が高くなるため、確定申告をすることでかえって損をしてしまいます。
また①②により確定申告をすることで所得が増えた場合には、例えば旦那さんの扶養から外れることになったり、国民健康保険料の負担額が増えたり、高齢者の方においては医療費の窓口負担額が増加したりと、ご自身の税金以外の部分に影響してくる場合もあります。
従って、場合によっては、あえて確定申告をせずに源泉徴収されたままで済ます方が有利になることもあります。
以上のように、特定口座に関する税額計算については、他の所得や扶養の状況、また社会保険料や医療費の分野まで影響することがありますので、慎重な判断が必要となりますのでご注意下さい。