借金の解決方法「債務整理」のメリット・デメリット
こんにちは。ひかり司法書士法人の長澤です。今回は債務整理についてのお話です。
債務整理とは
専門家(弁護士・認定司法書士)に依頼して、借金の毎月の返済額を減額したり、借金自体を無くしたり、利息をカットしたりする手続き全般を指します。
消費者金融からの借入だけでなく、銀行からの借入や、ショッピングの分割払い、リボ払いは対象になりますか?という質問をよく受けますが、全て債務整理の対象になります。
他にもエステの契約、各種講座の受講料などをクレジットカードで支払っているような場合でも同様です。なお、税金など公的な支払い義務があるものは対象外です。
債務整理の種類
債務整理には大まかに「任意整理」「自己破産」「個人再生」の3つの方法があります。
どの手続きにも共通するメリットとして、専門家に依頼することで業者からの督促が原則すぐに止まります。支払いが遅れると職場や自宅に借金の督促や請求の電話がかかってくるのでは、という不安を抱える方も多いですが、専門家に頼むことで落ち着いて生活再建の方法を考えることができます。
共通するデメリットとしては、当分の間、新たにクレジットカードを作ったり、ローンを組んだり、保証人になったりすることができなくなるということが挙げられます。借金生活から抜け出すために債務整理をするので、借金をせずに生活をする意識を持つことが大切です。
任意整理とは
債務整理の3つの手続きのうち、他の2つが裁判所を利用する手続きであるのに対し、任意整理は裁判所を介さない最も簡易な手続きです。債権者と弁護士、司法書士が交渉をして、分割返済の合意をします。
任意整理の主なメリットは次のとおりです。
- 毎月の返済額が下がる
- 利息を大幅にカットできる
- 家族や職場に内緒にできる
- 依頼をする借金の対象業者を選べる
たとえば、「車のローンは残っているがどうしても車だけは手放せない。」という場合、任意整理なら車のローンを依頼の対象から外せるため、車を手放さなくて済みます。
また、「奨学金に保証人として親戚がついているので知られたくない。」という場合も、奨学金を除いて任意整理をすれば、保証人に知られずに手続きが進められます。
他にも「求職中で今月の支払いは厳しいけど、就職が決まったので来月からは支払えるようになる。」「ショッピングの一括払いの請求金額が予想より高額で、分割にならないと支払えない。」という方にも任意整理が選択肢に入ります。買い物依存、カード依存のため借金ができなくなるようにしてほしいという方が任意整理の依頼をしてくることもあります。
デメリットは、債務を分割して支払う契約をするため、毎月の返済額は減りますが、それを支払える程度の収入が必要になります。
自己破産とは
裁判所を利用して借金を免除してもらう手続きです。借金自体がなくなるので生活再建にとっては一番の近道だと言えます。
自己破産の主なメリットは次のとおりです。
- 原則として借金自体がなくなる。
- 手続き費用が次に紹介する個人再生よりも低額
自己破産の主なデメリットは次のとおりです。
- 経済的に支払不能状態であることが要件なので、安易に選択することはできない
- 資産的な価値のあるものは売却される可能性がある
- 一定の資格や職業は破産手続中に制限を受ける
- 官報に氏名住所が記載される
- 免責不許可事由があると免責されない可能性がある
どういうものが売却されるかは個別に考えていく必要がありますが、主なものとしては住宅などの不動産、株式や積立型の保険などがあります。冷蔵庫や洗濯機などの生活用品は売却されませんし、車についてもローンが残っていないもので資産価値が低いものは引き上げられません。
資格や職業制限の例を挙げると、生命保険募集人、警備員、弁護士、司法書士などの士業などが該当します。それ以外の資格や職業はやや特殊なものが多いため、一般的な会社員やパートの方は該当しない場合がほとんどです。なお、自己破産手続きをしたからと言って、永久にその職業につけないわけではなく、破産手続中は制限を受けるということです。
官報に氏名住所が記載されるので周囲に知られるのではないか、と気にする方もいますが、官報を見てチェックしているという一般の方は通常はいないので、官報に関わりのある職場ではない限り、周囲に知られる可能性はとても低いかと思われます。それよりも、支払いが困難になり、職場に債権者から直接電話がある危険のほうが大きいです。
また、ギャンブルやFXなどの借金があれば破産ができないという話を聞いたことがある方もいるかもしれません。確かに破産法252条にも免責不許可事由として規定されていますが、実務上はこれが借金の原因の一つでも免責が下りることがほとんどです。但し、ギャンブルの浪費金額が大きすぎる、直近にFXで多額の金銭を失っているような場合は、自己破産ではなく他の手続きの選択を勧める場合もあります。
余談ですが、インターネット上や噂などで、破産をすると子供の将来に影響するとか、戸籍や住民票に記載される、選挙権がなくなるというものがありますが、全てデタラメです。
個人再生とは
自己破産と同様、裁判所を利用して借金を減額してもらう手続きです。任意整理では支払えるほどの収入がないが、自己破産は選択できないような場合に個人再生をすることが多いです。
個人再生の主なメリットは次のとおりです。
- 利息だけでなく借金自体が減額される(最大5分の1から10分の1)
- 自己破産と違い、資産を売却しなくて済む
- 自己破産と違い、資格や職業制限がない
- 免責不許可事由があっても申立可能
個人再生の主なデメリットは次のとおりです。
- 借金自体が減額されるが、最低限支払うべき金額が決まっている
- 資産価値が高い場合、①の金額が高額になるため現実的に支払えない可能性がある
- 自己破産と同様、官報に氏名住所が記載される
上記のように、借金自体はなくなりませんが、利息だけでなく借金自体を減額させる手続きであるため、借金の減額のされ方でいうと、個人再生は任意整理と自己破産の中間的な位置づけです。どんな人が個人再生を選択するかというと、「住宅だけは守りたい」「自己破産だと職業制限にかかるため破産ができない」「過去にギャンブルで自己破産をしたことがあり今回もギャンブルで借金を作ってしまった」「任意整理だと毎月の支払額が払える状態ではないが、自己破産には抵抗がある」という方がこの手続きを選択することが多いです。
以上の話は一般的な考え方なので、相談者の方の年齢、収入、家族関係、借金の金額、借入債権者や使い道など様々な要因によって個別具体的に最良と思われる方法が変わることがあります。
一人で悩むよりも専門家に相談することで経済的にも精神的にも楽になれます。まずは自分だったらどういう選択肢があるのか、ということをわかった上で、依頼するのかどうかを決めることが大切だと思います。
2019年2月6日 | 司法書士ブログ / Posted: ひかり司法書士法人