シリーズ『管理会計入門』(6)必要利益

みなさん、こんにちわ。

ひかり会社設立サポーター、税理士の山下です。

シリーズ『管理会計入門』、第6回目の今回は、前回まで記載してきました損益分岐点売上高のお話からは少し視点を変え、会社が毎年残していくべき利益について記載致します。

前回の連載5回目では、会社が残したい利益と毎期必要な固定費の額をもとに、損益分岐点売上高の算定方法をご紹介しました。
それでは、会社が残したい利益とはいくらでしょうか。言い換えると、これから起業する皆さんは、その事業を継続していくために、毎年最低限いくらの利益を残して行かなければならないのでしょうか。
この必要利益を考えずに、「とりあえず100万円も利益が出れば十分だろう」などとイメージで起業すると、場合によっては資金繰りに窮する可能性もありますので注意が必要です。

それでは、必要利益の算定方法ですが、まず以下の様な会社があるとします。

税引前利益が10万円に対して、30%の税金が課せられ、税引後利益(当期純利益)が7万円と黒字決算となっております。
通常であれば黒字決算な訳ですから「これで良し」と思えるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

注目すべきは「設備投資」と「借入金」の欄です。

この会社は起業するに当たり、銀行から300万円の融資を受けて300万円の機械を購入しました。
機械などの設備については、購入した年度で300万円全額を経費計上することはできません。通常は設備ごとに定められた耐用年数に応じて、複数年に按分して費用計上します。
上記の例では、話を単純化するため、300万円の機械を10年間で均等按分しており、それが損益計算書の「減価償却費300,000円」として表示されています。
この減価償却費というのがやっかいな存在で、他の経費と異なり、この300,000円という金額は按分した理論的な金額であり、実際にこの年度において会社が300,000円を支払ったわけではないということです。

一方、この機械装置を購入するために銀行から300万円を借りていますが、今回の例では5年で返済することになっていますので、この年度の返済額は600,000円となります。そして借入金の返済額というのは、損益計算書には記載されません。

ここで、損益計算書に記載された経費の額と、実際のお金の支払額に差が生ずることになります。つまり、損益計算書には減価償却費として300,000円の記載がありますが、この金額は理論上の数値であって実際のお金の支払額ではなく、一方借入金の返済額600,000円については損益計算書には記載されないものの実際のお金の支払額なのです。

そう考えますと、この会社の場合、見た目上の税引後利益(当期純利益)は70,000円の黒字ですが、実際のお金としては、理論値の経費である減価償却費300,000円を足し戻し、借入金の返済額600,000円をマイナスしますと、

税引後利益70,000円+減価償却費300,000円-融資返済額600,000円=△230,000円

となり、この会社は損益計算書では黒字でしたが、お金については、この事業年度において23万円減少したことがわかります。
つまり損益計算書の必要利益としては、70,000円では不足だったということですね。

結局、この会社がお金を減らさないための必要利益はいくらでしょうか。

減価償却費300,000円が借入金返済額600,000円を下回ったことが、見た目は黒字にもかかわらずお金が減少した原因だったため、この借入金返済額600,000円から減価償却費300,000円を引けば、必要利益が出てきます。
ただし会社の利益には法人税等が課されるため、この税金の支払分も考慮しなければなりません。

通常、会社の必要利益は以下の公式で算出されます。

必要利益=(借入金返済額-減価償却費)÷(1-法人税率)

この会社の場合の必要利益(税引前利益)は、法人税率30%とした場合、

必要利益=(600,000円-300,000円)÷(1-30%)=428,571円

となります。税引前利益428,571円から、この30%の法人税等128,571円を引くと、税引後利益(当期純利益)が300,000円必要ということです。
300,000円の当期純利益が必要だったのに、上記の例では70,000円しか利益が出なかったので、お金が230,000円減少したという訳です。

次回は、これまでのおさらいとして、会社の見込み経費額から、必要利益および損益分岐点売上高を算出していく一連の計算の流れを記載致します。

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