シリーズ『資金繰り表の作リ方』 (1)会社の資金繰りを把握することの重要性について
こんにちは ひかり会社設立サポーター、税理士の山下です。
前回まではリシーズとして「経理業務の効率化」について、その手法やポイントをお届けしてきました。 今回からは効率化によって空いた時間で、経理社員が本当にしなければならない業務について、その中でも当面は「資金繰り表の作り方」について記載して行きたいと思っています。
今回はその第1回目ですので、会社の資金繰りを把握することの重要性についてお伝えしたいと思います。
ある程度規模の大きな会社で、経理社員が複数いるような会社であれば、毎月の社長への業績報告資料の中に、試算表だけでなく資金繰り表も含まれている会社は多いかと思います。 しかしながら従業員数名程度の小規模な会社では、資金繰りについて把握している人材がいないため、資金繰り表を作成することもなく会社経営を行っている会社も少なくありません。
しかしながら会社の規模に関わらず、会社の資金繰りを把握せずに会社経営を行うことは、非常に危険な状態であると言わざるを得ません。
なぜなら会社と言うのは「資金残高が(一瞬でも)マイナスになる=倒産」であり、いくらその後に多額の入金が見込まれていたとしても、その時に支払わなければならない資金が不足していれば、会社にその後の未来は無いからです。 このことを十分に意識せず、過去の試算表や預金残高の推移を眺めているだけでは、将来会社の資金が増えるのか減るのか把握できるはずもなく、まるで地図やコンパスを持たずに大洋を後悔するようなものでしょう。
このような話をしますと、「当社は前期に比べて売上も順調に伸びているし、儲かりこそすれ倒産なんかするはずが無い」と仰る会社もいらっしゃるのですが、あくまで会社が儲かっている(=利益が出ている)ことと、会社のお金が増えていくことはイコールではありません。 詳しくは次回以降に記載しますが、その会社が現金商売ではなく、掛け販売をしている卸売業のような事業の場合、商品の納品時期と代金の回収時期は異なるため、得意先からの回収条件によっては売上が伸びるほど会社からお金が出て行くこともあるのです。(このことに気づかず、会社は利益が出ているのに資金が足りなくなって会社が倒産してしまうことを「黒字倒産」と言います。)
こうした事態を招かないためにも、会社を堅実に経営していくためには、試算表などの儲けを示す資料だけでなく、資金繰り表などの資金の過不足を示す資料も注視していく必要があるのです。
次回以降では、資金繰り表の内容に関する説明と、その作成方法について紹介していきます。