役員報酬の改定について
おはようございます。ひかり会社設立サポーターの岸本です。
最近、クライアント様とのお付き合いの中で、意外とご存じない又は曖昧に理解されているのでは、と多々感じた項目があります。それは役員報酬の改定についてです。役員報酬は、法人の役員の方にとってはとても身近なものでありますので、その改定の手続きや税務上の取り扱いについて、改めて触れてみたいと思います。
1.改定の手続きについて
役員報酬の改定は、法務上、一般的に株主総会で支給限度額を決定し、これを受けて取締役会で具体的な支給額を決定する方法が採られております。株主総会やら取締役会と聞くと難しく思われますが、株主が社長様のみや親族のみのケースが多い中小企業の場合には、実務上は形式的なものとなっているため、報酬の改定額=社長の意思決定額と考えていただいても良いと思われます。
ただし、株主総会や取締役会が形式的なものであっても、株主総会や取締役会の議事録は備え付けておいていただく必要があります。
2.税務上の取り扱いについて
①改定のタイミング
役員報酬の改定は、期中の業績の良し悪しや資金繰り等の要因によりいつでも好きな時に行うことはできません。改定は期首から原則3か月以内に行わなければなりません。例えば、3月決算法人の場合ならば、株主総会・役員会を開催して6月末までに改定を行う必要があります。1事業年度内において、役員報酬を改定することができるのはこの期間のみです。
ただし、例外として期中の役員の増減や職務内容の変更など臨時的な改定があった場合や経営状況が著しく悪化した場合などの報酬改定は例外とされています。
②定期同額給与
1月以下の一定期間ごとの給与で、その事業年度内の支給額は同額であるものを定期同額給与といいます。税務上の役員報酬はこの定期同額給与でなければ損金として認められません。つまり、役員報酬は支給額を変更してはいけないというものです。
ただし、上記①のタイミングでの改定が行われた場合には、「改定前の毎月の支給額」と「改定後の毎月の支給額」がそれぞれ同額である場合はそれぞれを定期同額給与として取り扱われるので、税務上、損金として認められるのです。
≪役員報酬の改定について≫(国税庁『役員給与に関するQ&A(平成24年4月改定)』の[Q2]より抜粋)
以上のことから、役員報酬の改定をする場合には、株主総会・取締役の決議により期首から3か月以内に行い、その改定前後の支給額をそれぞれ同額とすることが、税務上損金として認められる要件となります。
実務的には、役員報酬の改定の要否を検討されるには、原則的には事業年度初めが唯一のタイミングであることをお知りおきください。