2016年11月号
目次
2%の物価上昇目標
先日、日銀は2%の物価上昇目標の達成時期を2018年度に延期しました。度重なる先送りの結果、もはや黒田総裁の任期中での達成は困難になったというわけです。いわゆる「異次元緩和」を始めて約3年半。すでに発行残高の約4割にあたる国債を買い占め、大量の資金を市場に供給しているにもかかわらず、物価上昇率は低迷を続けています。
ところで、日銀は物価安定の目標として消費者物価の対前年上昇率を2%としているわけですが、これを「72の法則」に当てはめると、物価は36年で2倍になる計算になります(この72の法則とは、お金が2倍になる期間が簡単にわかる便利な算式で、例えば「72÷金利≒お金が2倍になる期間」となりますから、72÷2=36、というわけです)。
したがって、2%の物価上昇率が経済の安定成長のバロメーターであるとするならば、36年前の物価は今の約半分でなければならないことになります。
そこで、1980(昭和55)年当時の物価を調べてみました。例えば、郵便葉書が20円で封書が50円、京都の市バス均一区間運賃が110円で当時の国鉄の最低運賃が100円、全国紙の朝刊が70円で週刊誌が200円等々です。
さて、これらの商品やサービスの今の価格はいくらでしょうか。みなさん、ご存じだと思いますが、郵便葉書が52円で封書が82円、市バス運賃が230円でJRの最低運賃が120円、全国紙朝刊が150円で週刊誌が400円、とこんなところでしょうか。当時は存在しなかった消費税の影響を加味しなければならないのですが、そこは端折るとして、JRの最低運賃を除いては、価格は確かに2倍前後になっているようです。さらに、大卒初任給も114,500円から約2倍の204,500円になっていることも確認できます。
もちろん、これらは一例であり、例外も少なくはないとは思いますが、2%という日銀の物価上昇目標が種々の理由から設けられたものとはいえ、一方で日本経済の成長の足跡に沿うものといった見方もできるのではないでしょうか。
家族でできる信託
今、信託に注目が集まっています。とはいっても、投資信託のことでも、信託銀行が販売する遺言信託などの商品のことでもありません。注目されているのは、信託法に基づいて組成される財産管理の手法としての民事信託です。民事信託というと少し堅いので、ここでは「家族でできる信託」と言っておきましょう。
注目されている理由として、遺言ではできないことが可能になるという点があげられます。
遺言では二次相続以降の承継先を指定することは不可能とされていますが、信託であれば二次相続以降の資産承継者の指定が可能になるのです。
つまり、配偶者から子へ、子から孫へというように、目の黒いうちに虎の子の財産の行方を確定することができるというわけです。
さらに、相続ならぬ争族を未然に防ぐことができるという点も見逃せません。遺言があっても、相続人の分割協議によって相続財産は自由に処分されてしまいます。つまり、遺言は反故(ホゴ)にされる可能性があるのです。そこで、生前に信託契約によって財産の行方を決めておけば、相続人の間で対立が生じた場合でも安心です。さすがに信託を反故にすることは法律では予定していません。
もっとも、信託といえども決してオールマイティではありません。信託なら何でもできるというわけではなく、信託法の規制に従わなければならないことはもちろん、民法の基本原則を外してはならないからです。
そして、信託は当事者の思いを反映して手作りで組成されなければなりません。専門家のアドバイスを受けつつ、家族で知恵を絞って工夫を重ねた信託であれば、将来にわたる財産の承継を確実なものにし、争族の芽を未然に摘むことができます。これこそが、高齢社会に対応するためのノウハウとしての「家族でできる信託」というわけです。
なお、この「家族でできる信託」に関して過日開催したセミナーの様子を次ページで紹介していますので、そちらもご覧ください。
大阪事務所は移転しました
税理士法人と司法書士法人が開設している大阪事務所ですが、11月からフロアを8階から3階に移転し、広さも約2.5倍に増床しました。
これまでは簡単な接客スペースしかなかったため、お客様との打ち合わせにやや難があったのですが、個室と半個室を設けましたので、周りを気にせずにお話しすることができるようになりました。
ビルや電話番号に変わりはありません。フロアだけが変わりましたので、お近くへお越しの節は是非お立ち寄りください。
(文責:光田)
大阪事務所 所内風景
「家族でできる信託」(今、話題の家族信託について学ぶ)について
去る平成28年11月8日にホテルセントノーム京都にて、代表の光田が講師を務め、第22回レベルアップセミナー「家族でできる信託」を開催いたしました。おかげさまで今回も多数の方にご参加いただき、大盛況のうちに終えることができました。セミナー終了後には、より具体的な活用法についても知りたいとのご意見もいただきましたので、今回はこの家族信託についての概要をご説明いたします。
信託の活用
急速な高齢化を背景に相続トラブルが右肩上がりに急増している現状の中で、「相続」が「争続」にならないような相続対策のスキームの一つとして、民事信託に注目が集まっています。
民事信託とは、自分自身の財産を、営利(信託報酬)を目的とする信託銀行などに託す商事信託ではなく、営利を目的とせず、信頼できる家族や親族に託す信託をいいます。つまり、本セミナーでは、その信託を活用することにより、いかに財産を後世の世代に円滑に承継していくことが出来るかがテーマでした。
信託の概要
信託とは、お金や不動産などの財産を持っている人(委託者)が信託行為(信託契約、遺言等)により、その信頼できる人(受託者)に対して、その財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って、その信託行為で発生した利益を受け取る権利を持っている人(受益者)のためにその財産の管理・運用・処分などをする制度です。
信託のメリット
この信託を利用する大きなメリットの一つとして成年後見制度や遺言では出来ない部分をカバーできる点が挙げられます。
成年後見制度(法定後見・任意後見)では、被後見人の生活が維持されることが前提とされています。従って、被後見人の持っている財産を積極的に運用したり、将来の承継を見据えた効率的な財産管理をしようとしても、家庭裁判所が保守化しており許可しない場合も多く、有効な相続対策が出来ないことがあります。また、後見人は、被後見人の死亡後の財産管理・承継をおこなうことはできません。
そこで信託では、成年後見制度とは異なり、受託者を指定してその受託者が積極的に財産を運用管理することができます。
一方、遺言では、自分が死亡した際に次の世代に財産を渡すことはできますが、更にその次の世代に財産を渡す人を指定することはできません。
また、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる遺産分割協議をすることも可能であり、その場合は遺言の内容が実現しない余地があります。
信託では、遺言では出来ない自分の死亡後でも受益者が死亡したときのために、次の受益者を指定して財産の承継先を決めておくことができます。
是非、ご相談を!
信託は、もちろんオールマイティーな万能なものではありません。そのため、相続対策を考える場合は、信託のみを検討するのではなく、信託の活用が最適かどうか様々な観点で検討すべきと考えます。私どもでは、お客様の親族関係・資産承継への思いなどを伺いながら、民事信託を含めたひとりひとりに合わせたオーダーメイドの相続対策を行います。相続でお悩みの方は、是非ご相談ください。
(文責:小川一郎)
◆セミナー会場の模様◆
《一般社団法人 日本相続知財センター京都》
専門用語を使わない相続・遺言講座」
12月5日(月)13:45~16:00
ホテルセントノーム京都2F「平安西の間」
空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について
総務省統計局の調査によると、平成25年10月時点で空き家が全国に約820万戸(全住宅の13.5%)となっており、年々増加の一途をたどっています。適切な管理が行われていない空き家は、地域の防災、衛生、景観等の生活環境の面から深刻な社会問題となっています。このような空き家問題を解消するため、税務上での特例や助成金等、制度面からの対策が講じられています。
今回は、平成28年度の税制改正で創設された、『空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例』についてご案内させていただきます。
制度の概要
『空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例』とは、相続日から3年を経過する日の年の12月31日までに、被相続人が住んでいた家屋を相続した相続人が、その家屋又は取壊し後の土地を売却した場合には、当該家屋又は土地の売却益から3,000万円を控除することができる制度です。
この特例の適用の場面としては、下図のように2つに分けることができます。
- 家屋と土地を同時に売却する場合
※家屋を売却する場合は耐震基準を満たしている必要があります。 - 家屋の取壊し後に土地を売却する場合
特例適用のための要件
Ⅰ. 適用期間
- 相続日から3年を経過する日の年の12月31日までに売却すること
- 平成28年4月1日~平成31年12月31日までに売却すること
Ⅱ. 売却する空き家の条件
- 相続によってその空き家を取得したこと
- 空き家になる前は被相続人だけが住んでいたこと
- 相続したときから売却のときまで、空き家の状態であること
- 空き家は昭和56年5月31日以前に建てられたものであること
- 区分所有建築物(分譲マンションなど)でないこと
- 相続のときから売却のときまで、事業用、貸付用又は居住用に使用していないこと
Ⅲ. 売却するときの要件
- 売却金額が1億円以下であること
- 空き家を売却する場合には、その空き家に対して必要な耐震改修を行っていること
特例適用のための必要書類
Ⅰ. 土地・家屋を同時に売却する場合
- 譲渡所得の金額の計算に関する明細書
- 被相続人の居住用家屋及びその敷地等の登記事項証明書等
- 敷地等の売買契約書の写し等
- 被相続人の居住用家屋等確認書(被相続人の住所地の市区町村に申請書を提出する必要があります。)
- 被相続人の居住用家屋の耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
Ⅱ. 家屋の取壊し後に土地を売却する場合
前段Ⅰ.⑤以外の資料
最後に
平成27年5月26日から空き家対策特別措置法が施行され、市区町村から改善勧告があると、土地に対する固定資産税の特例(優遇措置)から除外されることにより、土地の固定資産税の負担が大幅に増えるおそれがあります。
当法人では、空き家の売却を検討されている方へ物件の無料査定を、空き家を売却された方へ特例適用についてのご相談を承っております。
空き家についてお困りの方は、お気軽にご相談ください。
(文責:中島晴信)
「どうしよう?」にお答えします!
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『セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)』について教えて下さい。
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セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降にスイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。
具体的には、平成29年からは、医療費関係の領収書をスイッチOTC医薬品とそれ以外の領収書に分別し、確定申告の際に、現行の医療費控除もしくは、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)のどちらか有利になる方法を選択適用することになります。
※どちらが有利か判定する計算方法
- 医療費関係のすべての領収書が188,000円を超えるときは、医療費控除を選択
- 医療費関係のすべての領収書が188,000円未満のときは、①と②で算出された金額を比較し、①の方が大きければ医療費控除、②の方が大きければセルフメディケーション税制を選択
①医療費関係のすべての領収書の合計金額から、10万円(注1)を控除した金額
②スイッチOTC医薬品の領収書の合計金額から、12,000円を控除した金額(但し、上限は、88,000円)
(※注1) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
この制度により、従来、医療費が年間10万円を超えないことから医療費控除を使えなかった人も、OTC医療品の年間購入額が12,000円を超えれば、控除を受けられる場合があります。
(文責:京都事務所 橋本)
チョットお邪魔します。人気のお店訪問
オバマ大統領など多くの著名人が訪れるカナダで大人気の名物スイーツ店BEAVERTAILS(ビーバーテイルズ)が自由が丘で食べられる! 10月7日に開店1周年を迎えたばかりの新感覚スイーツ店を、今回はご紹介します。
自由が丘駅正面口より徒歩5分。のんびりとした雰囲気の漂う九品 仏川緑道沿いに「BEAVERTAILS 自由が丘店」があります。
看板メニューのペイストリーが、ビーバーのしっぽの形に似ている ことから「ビーバーテイルズ」と名付けられたこのお店。
全部で12種類あるペイストリーの生地には、粗挽きの小麦粉を使い、 風味が良く、新しい食感が特徴です。一つ一つ手で伸ばしているので、 中央は薄くクリスピーに、ふちは生地が厚くふわっとしていて、1枚 で色々な食感が楽しめます。サイドメニューも充実しており、揚げた ての生地に冷たいソフトクリームをトッピングした「ビ-バーサンデ ー」、6種類のフローズンフルーツの中から自由に組み合わせが選べる「スムージー」、季節毎に入れ替わるオリジナル「ジェラート」なども ご賞味いただけます。
今回はペイストリーをご注文の際に、「ひかりのレポートを見た」とお伝えいただくと、お好きなドリンクを1点サービスして下さることになりました(平成28年12月末までのサービスです)。
お近くにお越しの際には、ぜひ是非お立ち寄り下さい。
〒158-0083 東京都世田谷区奥沢七丁目4番12号 UPビル1F
【営業時間】
平 日:OPEN 11:00~CLOSE 19:00 【TEL】03-6809-8628
土日祝:OPEN 10:00~CLOSE 19:00 【定休日】無休